食べることは生きることeatrip

食べることは生きることeatrip

『食』がテーマの映画eatrip

2009年6月6日に『食』をテーマにした映画『eatrip』が公開されました。テーマの食ですが、フードディレクターとして活躍しつつ、原宿で隠れ家レストランで高い評判を受けている野村友里さんが監督です。この作品は第33回モントリオール世界映画祭のドキュメンタリー・オブ・ザ・ワールドへ正式出品となりました。

映画:eatrip

映画『eatrip』(イートリップ)のタイトルの名前で、野村友里さんはフードククリエイティブチームを主宰しています。ケータリングサービスの演出や料理教室をしたり、雑誌へ料理を紹介したりラジオ出演をしたり『食』をテーマに色々な提案をして『食』の可能性を発信しています。フードクリエティブチームを主宰しながら、野村友里さん自身が尊敬している人たちと『食』について、きちんと美しい状態で残したいという理由から、映画を撮ることになりました。

初監督となった野村友里さんは、『食べることは生きること、生きることは食べる旅』つまりeatrip。『食』と人との向かい合い方に着目した作品を撮ってみたいという思いから出来上がった作品はどのような作品なのでしょう~?!

『食』のドキュメンタリー

生きるために食べる。人間は食べなければ生きて行くことはできません。この映画は『食』を通じてつまり食べること通じて、生きることを知るための旅がテーマになっています。ついつい適当に食事をとってしまいがちな毎日ですが、食べることをもっとつきつめて「今、なにがだいじなのか」という。目に見えない空間だったり気持ちという、食を通じて世の中に問いかけたいという思いがあったようです。

ドキュメンタリー作品ということもあって、今回の作品を撮影するにあたって16mmのフィルムで撮影でした。いつどこでよいカットが撮影できるかどうかがわからないものを、デジタルではなくあえてフィルムにしたこだわりは、美しい瞬間をそのままの状態で小細工ナシで映し出したいという思いからです。

ドキュメンタリーだからこその、一発勝負。決められた台本が存在しているのではなく、映画の中に登場しているいろいろな職業のひとたちは、野村友里さん自身が人となりをよく理解されている方々ばかりです。「考え方と行動にブレがなく、シンプルな生き方」をされているという共通項をもっている方々が出演されています。

台本がある作品ではなく、ドキュメンタリーならではの良さが楽しめるのは歌手のUAさんや俳優の浅野忠信さんのナチュラルな姿を楽しめるというのも、この作品の魅力にもなっています。特に浅野忠信さんは今回初の茶道を体験されています。浅野忠信さんをもてなしたのは、武者小路千家の現在家元の千宗屋です。浅野忠信さんは、「人生の中で茶道に興味を持ったことはただの一度もない」と言い切っていますが、このような機会がなければお茶を理解しようとは思わなかった。とも話しています。

もちろんドキュメンタリーなので1発勝負。監督をつとめた野村友里さんは、浅野忠信さんと千宗屋さんとの茶室のシーンを撮影する時に「一度だけシュミレーションして見る?」と提案しました。ところがやはりシュミレーションをするとドキュメンタリーになりません。「これ、ドキュメンタリーだよね」と、そのままフィルムでどんどんと撮影が進むうちに茶室の空気は、千宗屋さんと浅野忠信さんとの空気がひじょうに濃くなり味わいのある場面となっているので必見のシーンになっています。

沖縄の暮らし

いろいろな人たちが登場しますが、浅野忠信さんが気になったのが沖縄北部の山原(やんばる)も東村で自然農法を取り入れた農業生活を送っている森岡尚子さんです。森岡夫妻は沖縄出身ではなく、尚子さんが生まれたのは渋谷区です。生まれ育った場所が、新宿の副都心の高層ビルを見ながら育ったということもあって、自然の中での生活にずっと憧れを抱いていたとか。

森岡夫婦は山原の中で自給自足生活を目指して暮らしていますが、時計もなければ冷蔵庫もない掃除機もない生活です。森岡夫妻が暮らしている家も、旦那さんが手作りで友人の大工さんに教えてもらいながら半年間、テントに泊まりながら自分自身で建てた家です。森岡夫妻は農業をしながら生活をしていますが、その農業も有機栽培とかではなく『自然農法』です。自然農法は、自然とつくように農薬を使用しないのはもちろんのこと、肥料もつかわず、そしてびっくりなのが田畑を耕さない。というまさに自然そのままに作物をつくります。

『自然農法』は故福岡正信さんが提唱した同時の農法ですが、森岡さんは『自然農法 わら一本の革命』を読み、自然農法の思想に衝撃を受けました。そして福岡さんが愛媛で農園を営んでいたので、その自然農園で学びました。自然農法での農業は、農業を知らなくてもかなり衝撃です。耕さないで作物なんてできるはずないと思っていしまいます。実際にこの農法は「種のばらまき」状態で作物を作る農法ですが、タイミングさえ間違わなければ間引きもしなければ除草もしません。視点をかえれば、雑草も木もどちらもなんでも食べられるからです。耕さない自然農法で、実際に石ころだらけの土地で大根が出来たり、キャベツやトマトまでも出来て収穫しているとか。驚くことに周囲の人たちからムリだといわれていたお米も出来たそうです。

環境破壊になるべく加担しないで暮らす、という自給自足生活を目指した森岡夫妻の沖縄での生活は、夫婦ふたり子供とのとってもシンプルな生活です。浅野忠信さんは、自然と共存しながら生活している森岡家族の生活に憧れを感じるとか。不便ではあるけど、不便だからこそ大自然の中での生活は心が豊かになるのではないか。という点で興味があるそうです。

命をいただく

映画の冒頭で鶏ハーブを詰めて料理をする場面が登場しますが、鶏はいわば絞めたての鶏です。スーパーマーケットで販売されているのは、鶏肉でも牛肉でも豚肉でも部位ごとにカットされて発砲スチロールに入って販売されています。鶏肉はにわとりだと頭では理解していますが、鶏を実際に絞めているのを見たことがある人のほうが珍しい時代です。パックで販売しているのが当たり前なので、鶏を絞める様子をまず見たことがないです。

eatripで絞めての鶏にハーブを詰めて料理される場面に、調理をする人の手元が登場しるので、この手元はフードディレクター野村友里さんの手元かな?と思いますが、残念ながら映像に映っている料理をしているのは別の方です。

別の方が絞めたての鶏を調理していますが、野村さん自身も鶏を絞めて感じることがあったそうです。鶏を自分の手で絞めたことで2ヶ月間、鶏肉が食べれなくなってしまったそうです。にわとりを絞めて、首が無くなったにも係わらず、鶏は歩いて内蔵を取っても、鶏の体から取り出した内臓は動きます。動く内臓を見て「生きたかった」であろう、『命』をいただくこと。お野菜にしても、食材のひとつひとつは命があり、その命を私たちはいただいている。というのを改めて感じさせてもらうことに、気づかされました。

普段の日常生活の中で、なにかしらの食事を取りますが、何気なく食べている食材であっても本来は「命」があるものを、私たちは頂いています。命を頂いていることを、忘れずに「食」とも向かい合っていくということを感じる場面でもあります。

フードディレクターとして

フードディレクターという仕事をしている野村友里さんですが、母親が料理好きだったこともあっていつも身近に料理がありました。なんでも初めて作ったものが、幼稚園の時「フィナンシェ」だったとか。なんてハイレベルなものを幼稚園のときに作っているんだと驚きますが、ごくごく自然に料理の道へと歩んだそうです。そしてさらに料理を勉強するために、渡英してそこで「食べることに言葉はいらない」ということを感じたそうです。

そして、現在でも大勢のお客さんで賑わうアメリカで一番といっても過言ではないほど有名な女性シェフのアリス・ウォーターが共同経営者として名前がある、バークレーにあるレストラン「シェ・パニーズ」で働いたこともあります。「シャ・パニーズ」はいわゆる地産地消のアリフォルニア料理店です。

地元で取れた食材に有機栽培など、食の安全に注目したレストランが多い外食産業の中で、カリフォルニアで40年も前に実践しているレストランとしても、知られています。「シェ・パニーズ」の料理の基本は、フランスのカントリー料理です。イタリアンの要素などが加えられ、さらに地元のカリフォルニア産の食材に会うようにアレンジされています。「シェ・バニーズ」で働いていた人たちが、このお店を巣立った後にカリフォルニアで評判高いレストランを数々オープンさせていることもあって、「シェ・バニーズ」は常に注目を集めているレストランです。

全米屈指のそしてエコや環境問題に、とっても感心が高いバークレーで地産地消を実践している「シェ・バニーズ」で働いたことのある野村友里さんは、フードディレクターとして「食」に関係するテーブルウェアや空間デザインなど、多くの五感を刺激するものを形にするべく活躍されています。